不動産管理・仲介のアイワ不動産(静岡市)は宿泊施設の運営に参入する。
静岡県島田市の廃校となった小学校をグランピング施設として改装し、2022年2月に開業する。
総事業費は約4億円。8月の中部横断自動車道の全線開通も追い風に、年間8000~1万人の利用を見込む。

施設の名称は「グランピング&ポート結(ゆい)」。
敷地面積は約1万3200平方メートルで、校庭だった場所に芝生を敷き詰め、1~6人で宿泊可能なテント21張りを設置する。
テントはドーム型のほか、中央に高さのあるハスの花のような形のテントなどがあり、テント内はリゾート風に仕立てた。
各テントサイトにはバーベキューができる調理場があり、朝夕で6000円程度のバーベキュープランを付けたり、食材を持ち込んだりできる。

2階建てで延べ床面積約2500平方メートルの校舎には、大浴場やコワーキングスペース、「きき茶」やほうじ茶づくりといった地元の特産品を使ったイベントの体験室などを整備する。
夏場にはプールも使えるようにする。

価格は時期や人数によって異なるものの、食事別で1泊1人あたり5000~2万8000円程度を想定する。
個人や法人向けの会員サービスもつくり、会員特典として割引制度を設けて需要を喚起する。

施設は静岡空港(静岡県牧之原市)や東名高速道路吉田インターチェンジから車で約10分に位置する。
好アクセスを生かしコロナ収束後のインバウンド(訪日外国人)需要のほか、平日は静岡県内の地元客、休日は山梨、長野、愛知といった近隣県からファミリー層の需要を取り込む狙いだ。
アイワ不動産の関根和孝社長は「中部横断道の開通は新たな人の流れができるチャンスだ」と話す。

アイワ不動産は静岡県中部で賃貸物件や駐車場などを管理しており、9月にグランピング施設の運営子会社アイワコネクト(島田市)を設立した。
人口減少で長期的にはアパート・マンション需要の縮小が避けられないなか、観光宿泊施設の運営で地域の交流人口や定住人口の増加につなげ、賃貸や開発需要を維持する狙いがある。

グランピング施設は21年3月に廃校となった旧湯日(ゆい)小学校跡地に設ける。
6月にアイワ不動産が島田市から20年間同校を借りることで合意した。
島田市資産活用課は「企業に長期的、安定的に維持・管理してもらえ、かつ宿泊施設の新設に地域の人々の理解もあったケースだ」と話す。

少子化で廃校は全国各地で増えており、自治体にとっては維持・管理が課題となっている。
文部科学省の18年の調査によると、全国の廃校数は調査を始めた2002年度以降、17年度までで計7583校に上る。
施設が現存する廃校(6580校)のうち、5分の1は活用の用途が決まっておらず取り壊しの予定もなく、活用が課題となっている。